神奈川県厚木市旭町3-1-2 [GoogleMapで見る]
網膜はカメラのフィルムにあたる組織で、神経でできた膜です。
網膜は視神経を介して脳につながっており、脳の一部と考えることもできます。脳の病気やけがは、しばしば後遺症(半身まひ、ろれつがまわらない、など)が残ることはよく知られています。網膜も脳の一部であり神経でできた組織なので同じことがいえます。一度傷ついてしまうと元に戻せない、つまり、網膜の病気やけがで視力が悪くなってしまうと視力を回復できない、という可能性があるのです。
※網膜の病気の診断には、眼底検査が必須となります。
詳しい眼底検査をおこなう場合、目薬を使用して瞳孔を開く(散瞳する)ことがあります。検査後、数時間はお車やバイクの運転ができません。受診の際は、バスやタクシーなどの公共交通機関をご利用ください。
・網膜裂孔
強い打撲や、強度の近視、加齢現象などによって網膜に穴が開いてしまう病気です。放置すると、後述する網膜剥離に発展してしまいますので、なるべくはやめにレーザー治療をしなければなりません。飛蚊症が特徴的な症状です。急に増えたりしたときは、なるべくはやく受診してください。
・網膜剥離
網膜に穴が開き、眼球の壁からはがれてしまう病気です。はがれた網膜は機能が落ちるため、視野の一部に水が溜まっているように見えたり、視野の一部が暗く欠けるといった症状があらわれます。進行してしまうと、視力低下やゆがみなどの後遺症が残ってしまう可能性が高く、なるべくはやく手術による治療をおこなう必要があります。暗い場所で視野の端に光がひかる、というのも特徴的な症状のひとつです。
・糖尿病網膜症
神経障害、腎障害とならぶ糖尿病の三大合併症のひとつで、緑内障についで日本の失明原因の第2位の病気です。糖尿病のコントロールが悪ければ悪いほど、糖尿病を患っている期間が長ければ長いほど、発症しやすくなります。そのほか、高血圧や高脂血症を合併していると発症のリスクが上がることもわかっています。網膜に出血を起こす初期段階からはじまり、放置すれば最終的には網膜剥離や緑内障を発症して失明に至ります。この病気の厄介な点は、初期の段階では自覚症状がないことです。症状に気づいたころ(みえにくくなったころ)には、かなり病状が進行している可能性があります。自覚症状がないからといってまったく安心できないのです。
初期の糖尿病網膜症の段階は、ご自身の自覚症状にかかわらず、血糖値のコントロール状況や病気の期間、そのほかいろいろなポイントを考慮し、適切なタイミング(1か月~半年)で定期検査をしていくことが鉄則です。採血採尿だけでなく、定期的な眼底検査をうけることが絶対に必要であるということを忘れないでください。
中期の糖尿病網膜症の段階では、眼科的な治療(レーザー治療)が必要になります。レーザー治療は通常、外来で通院しながらうけていただきます。適切なタイミングでこの治療をおこなうことができれば、ほぼ病状を沈静化させることが可能です。しかしこのタイミングを逃すと網膜症は末期の段階に進み、治療しても大きな後遺症を残す結果につながります。レーザー治療が遅れないように、しっかり定期検査をおこなうことがますます重要となります。
末期の糖尿病網膜症の段階では、入院のうえ手術治療が必要になります。このころになると網膜の障害がすすみ、視力低下の症状もつよくなって一般生活にも大きな支障をきたすようになります。網膜はひとたび障害されるともとの状態に戻せません。このような末期にいたる前に、先手先手の治療をしていくことが重要です。
そのほか、糖尿病にともなう眼科の病気には、網膜がむくむ病気(黄斑浮腫)や、目に炎症をおこす病気(ぶどう膜炎)、目を動かす神経の麻痺などもあります。
・加齢黄斑変性
加齢により、網膜の中心部分(黄斑部といいます)が障害されます。視野の中心となる網膜がむくんだり出血を起こすので、見たい部分がゆがんでみえたり、視野の真ん中に暗い影ができて大きな視力低下をおこします。病気の原因は加齢なので、残念ながら完治させる治療法はいまだにありません。しかし、最近は薬の注射治療で病気の進行を遅らせることができるようになりました。喫煙や高血圧が病気の進行に関連していることもわかっています。定期的に網膜の画像検査(OCT検査)をおこない、病状の把握をしていくことが必要です。
・網膜中心静脈閉塞
網膜を流れる血管が詰まってしまう(閉塞する)病気です。視野が欠ける症状や視力低下の症状があらわれますが、閉塞の範囲や程度によって症状の強さはさまざまです。高血圧や糖尿病に合併することが多く、このような基礎疾患をお持ちの方は注意が必要です。また、この病気は、硝子体出血(眼球内にたまる大きな出血)や緑内障などを合併することがあり、レーザー治療などが必要になることがあります。